18〜19歳の時分によく遊んでいた友人がいる。
彼は少女マンガからそのまま抜け出てきたような、
色白で端正な目鼻立ちをした美貌の持ち主だった。
兄弟は上に姉が3人という女系家族の末っ子で、
おっとりした話し方でかわらしい。
純朴な性格でもあったので、周囲からはいじられキャラとして愛されていた。
彼とは同じ高校で、クラスは別だったために在学中はあまり接点がなかったが、
高校卒業後、共通の友人数人と飲みに行く機会があった。
そこで我々はすっかり意気投合してしまい、以降よく遊ぶようになった。
彼はぼくにくるりやスーパーカーを教えてくれた。
エリオット・スミスを初めて教えてくれたのも彼だった。
一緒に居酒屋や近所のバーで酒をのんだ帰路、
エリオット・スミスの"Miss Misery"を口ずさみながら
線路沿いの細い坂道を二人で歩いてぼくの家まで帰り、
色々他愛のないことを話しながらそのまま寝入ってしまったりしたこともあった。
常磐道を車でひた走り、仙台まで一緒にハナレグミ(だったと思う)の
ライブを見にいった思い出もある。
彼は「会社のオヤジたちは車と野球とパチンコのことばかり話している。」
「まわりに好きな音楽を話せる仲間がいなくてつまらない。」
「好きな音楽のことを話せる友だちは本当ににーのくんくらいしかいないんだ。」
そんなことを時々ぼやいた。
それは自分の職場も同じだった。
営業所が違うものの、ぼくらは同じ大手企業で働いていた。
多分、彼もぼくと同じような環境で鬱々と過ごしていたのだろう。
職場は閉塞感しかなかった。
ちなみに、ぼくはその後働いていた会社を4年勤めて辞めるのだけど、
ジョゼと虎と魚たちのサウンドトラックCDを彼に借りたまま引越してしまい、
会社をやめてずいぶん後になってから「返しに行くよ」と彼に連絡したことがある。
その時、彼からは「いいよいいよ、あげるよ。」とメールが返ってきて、
以降そのまま会うこともなく今に至っている。
連絡もぜんぜんとっていないけれど、彼はどうしているだろう。
結婚してるかな。元気だろうか。